ブルック・インターナショナルの前会長で、現在ナスダック上場の不動産コンサルタント、インシグニアの地域本部であるインシグニア・ブルックのコンサルタントとなったニコラス・ブルックが、小さな家族経営の不動産会社としてブルック・インターナショナルを設立したのは、1988年のことでした。彼の会社は、他の不動産会社との連携を行いながら、地域において成長をしてきました。1991年、彼は国際的な不動産会社ヒリアー・パーカーとのフランチャイズ契約を結び、双方に利益をもたらしたこの契約は7年間続きました。「ヒリアー・パーカーから、自分達の道を進みたいと言われたのはその時でした。」ブルックは言います。「その時私達は新たな道を進むにあたり、組織の方向性と将来像に関して、冷静で客観的な視点を持つ必要性に駆られていることに気づいたのです。そしてその思考プロセスの促進に関して、外部コンサルタントの必要性を私達が感じたのもその時でした。 当時ブルックは、答えを見出していないながらも、ある重要な疑問に気づいていました。「実際、市場には様々なチャンスが転がっていました。しかしその全てを掴みとることはできないのです。」ブルックは言います。「3つか4つの鍵となるエリア、私達の付加価値をはっきりと示すことのできる主力エリアを認識し、それにフォーカスすることが必要でした。」そしてそれは、進むべき方向性に向って、チャンスをふるいにかけ体系立てる確実なプロセスを見つけられるかどうかにかかっていました。
そのプロセスは企業の戦略開発を行う国際的コンサルタント会社、ストラテジック・シンキンググループによりもたらされました。「彼(ストラテジック・シンキンググループ会長のジェームス・ヘイバーン) は私と共に座りこう言いました。“将来を見通したいのなら、体系だった手法で進めなければなりません。直面しそうな脅威や挑戦を見据え、チャンスの窓口はどこにあるかを探り当てなければなりません”と。 そして卓越したプロセスで彼は私達を導きました。」彼は言います。「その時点で、私達は既に2つのことに気づきました。世界は変化し続けていること、そして私達はニッチな特定分野で戦うことになるだろうと。」このプロセスは彼の会社の強みをブルックが明確にすることにも役立ちました。「ジム(ヘイバーン)が行ったことの一つとして、組織の核をなす最大の能力は何かを私達が明確にできたことがありました。」 ブルックは言います。「そして私達は、組織の最大の強みが、新興成長市場における複雑な不動産問題の解決スキルだという結論に至りました。
そしてブルック・インターナショナルの新たな戦略開発は、正にその必要とされる時期に行われました。当時の不動産業界の世界的な状況悪化が意味するところは、全ての不動産会社が破綻をかろうじて免れる状況であがき続けることでした。「1998年と1999年は経済的に非常に大変な時期でした。」ブルックは言います。「給料は不確実で人々はそれが払われるかどうかも分からず、私達の19のステークホルダーの多くも、長く給料をとっていないような時期でした。あらゆる市場が一斉に悪化したことで、私達皆が、全ての不動産会社が、問題に直面していました。当時は皆が大きな打撃を受け、支払いをしていくのに大変な苦労をしました。皆がその場しのぎの経営をしていくしかなかったのです。
この困難な時期を彼らが切り抜けられた理由は、組織の新しい戦略の遂行だったとブルックは言います。「各チームのリーダーは、どのようにこの戦略決定がなされたか、各部門の観点からこの戦略はどのような意味を持つのか、というメッセージをセッションにおいて理解しました。まず高い地位の人々の理解と協力を得て、彼らが各々のチームを説得しました。」ブルックは言います。「そのフィードバックは非常に前向きなものでした。私達は、現状を正しく認識し、アジアの大きなチャンスを知り抜いた前向きな会社だと、皆感じてくれたのです。」彼は言います。「何人かのスタッフは去りましたが、大多数の社員は本当に忠誠心を持ってついて来てくれました。この鍵は、組織の将来に何がもたらされるかを皆にはっきりと示すことでした。ジュニアレベルの若い社員達にとって、確実性というのは非常に重要な鍵だと思います。」とブルックは言います。
しかし不動産市場の悪化を切り抜けた以外に、ブルックの戦略図には、ブルック・インターナショナルが今後市場を統合するであろう5,6社の一部分となることが描かれていました。「私達は、私達の持つ資源、つまり私達自身や、パートナー、株主の資産を基盤とした成長は、もう限界に来ていることに気づいていました。」ブルックは言います。「組織の更なる大きな飛躍を可能にし、あらゆる種類の多様なサービスを提供する地域に特化したビジネスを行う為には、非常に大きな資金 -私達の調達し得ない、又従来的な方法では銀行からの融資も恐らく受けることができないような- 大きな資金が必要だったのです。」そしてこの計画はブルックの社員にとっても納得できることでした。彼らも気づいていたのです。「アジアにおける様々なチャンスを掴む唯一の方法は、十分な資金源と世界的市場へのアクセスを得ることだ。」ということを。ブルックは言います。「この戦略は、彼らにも非常に前向きなものに見えたことでしょう。
その解決法は明らかに、会社の買い手を見つけることでした。「私達は事業内容の説明書やマニフェストを準備しました。」ブルックは言います。「沢山の人々からオファーを受けました。そしてその中から、ある国際的なファイナンシャルサービス会社との婚姻をほぼ決めかけている時、契約に際しての修正などを詰める段階にあった正にその時に、19ステークホルダー達は集まって話し合いを持ちました。”冷静になろう。これが本当に私達のしたいことだろうか?“と。そして、過去10年間に渡って、不動産コンサルティング業界でのブルック・ブランドの確立のために投資し続けてきた顛末として、ファイナンシャルブランドの一サービス部門にはなりたくないと、彼らは結論を出したのです。
その後は、最適なパートナーを見つけるため戦略の開発が鍵となりました。「買収において不可欠となる全ての要素を書き出し、私達は“不可欠”項目リストと“あるとよい”項目リストを作りました。これらは全て(戦略的思考)プロセスによって生み出されたものです。」ブルックの不可欠項目リストには、ブランドの構築が記されていました。彼は言います。「10年をかけて私達自身のブランドを作り上げてきたのです。それを今手放す訳にはいきませんよ。
「インシグニアからの誘いを受けたのはその時でした。」ブルックは続けます。「もし彼らが、“インシグニアの傘下にならなければならない”と言っていたなら、この契約は成立していなかったでしょう。」インシグニアはそのアジアにおけるオペレーションに“インシグニア・ブルック”を冠に据えることを受け入れ、その他のリスト項目にも問題はありませんでした。当時インシグニアはアジア地域に拠点を持っておらず、つまりは既存のオフィスやスタッフとの諸問題解決の必要も全くなかったということです。「6ヶ月の話し合いの期間を経て契約は結ばれました。そして2000年、私達はインシグニア・ブルックとして生まれ変わったのです。」インシグニアは全社員をこの新生したグローバルカンパニーの株主とし、管理職以上のレベルにはオプションも与えました。
近年、インシグニア・ブルックは経済危機で大きな困難に直面してきた会社のようには見えません。一新されたオフィスは輝かんばかりで、会社は地域的に、又、その支店数も着実に拡大を続けています。インシグニア・ブルックは現在アジア12カ国にわたり16のオフィスを持つに至り、約500人もの従業員が働いています。その最大の顧客は政府であり、取引の20%は一般的なビジネスアドバイス、残りの80%は不動産分野に特化しています。不動産分野であれビジネスであれ、問題解決を専門とする彼の会社において、彼自身が学んだ組織戦略の開発を、顧客の問題解決にも活用しできるのだとブルックは言います。
彼の将来像の観点から見れば、現行の戦略を見直すべき時が来ているとブルックは考えています。急速に変化する世界情勢を見据え、組織のトップに立つ彼は、常に戦略を再検討することの重要性を感じています。「一歩引いた視点から、冷静に物事を見ることが大切です。そして定期的に戦略に立ち返ることが必要なのです。なぜなら、状況は常に急速に変化しているからです。特にサービスの提供に関しては、1年前と比べてもまったく異なった手法が主流として使われているのです。」彼は言います。「テクノロジーが不動産評価の手法を、リサーチの方法を、そして複雑な問題分析の手法をも変えようとしています。計算上における大方の仕事はコンピューターができるようになりました。私達は、進むべき方向のもっと先を見続けなければなりません。恐らくは、私達の綿密な推測や仮説に基づいた計画よりも、更にその先を。
しかし、インシグニア・ブルックが現在や将来に渡って、その戦略の成否を証明するか否かに関わらず、会社の初期段階において培われた基盤となるツールはこれからも組織に生き続けるでしょう。彼の現在のオペレーションと、戦略的思考プロセスを得る前のオペレーションとの基本的な違いを彼に尋ねると、彼は、将来的な決定をより綿密に証明でき、市場及び実社会においてより賢明になったと答えました。「私達は以前とは比較できないほど物事を構造的に考えることができます。」ブルックはこう続けます。「しかし、構造的であることは時間がかかるという意味ではありません。つまりは、よりよい戦略的思考が可能になったということなのです。
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