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既存ビジネスの急成長

ウエスタンユニオン・ファイナンシャルサービス香港
アジア太平洋地域 シニア・バイスプレジデント
リック・タインズ氏へのインタビュー


ウエスタンユニオンアジア太平洋のトップ、リチャード・タインズに、彼の組織の長期的プランを尋ねてみると、その応えは非常に直接的で簡潔なものでした。「アジア太平洋における私達の戦略は、国際的な送金と受領の際に顧客に最も選ばれる企業ブランドとなることです。」 そして今までのところウエスタンユニオンは、この目標の達成に向かう道を進み続けています。リックが同地域に就任した1998年以来、アジアにおける成長率は毎年、前年の80%増という驚くべきものなのです。

しかし、この成長率を更に突出したものとなし得ているのは、アメリカのファーストデータコーポレーションの支払いサービス部門であるウエスタンユニオンが、新しい会社ではないということです。事実、同社は100年以上もの歴史を有しています。リックはこの成功を、一つの手法に固執しない組織形態の結果であると見ています。彼は言います。「進化し続けることをやめた企業は、結果的に人々から忘れ去られるのです。」と。

「国際的な送金や受領の際に顧客に最も選ばれる企業ブランドとなる為には、多くの努力が必要です。この信念とブランド戦略を貫く為、又ブランド価値の確立の為に、私達は顧客に更なるサービス選択の幅を与え、その国際送金を確実にコントロールしなければなりません。言いかえればそれは、国際的な送金を行う為の複数の代替手段、つまりより多くの選択肢を顧客に与えることが、他社とのいかなる競争をも凌ぐこととなるのです。」と彼は強調します。

1998年、800店舗であったウエスタンユニオンは、現在27カ国、12500店舗へとその数を急増させています。しかし、リックはここで安住してはいません。彼はほぼその倍である22000店舗へとその更なる拡大を視野に入れています。この不可能とも思える成長率の達成を彼は如何にして成し遂げたのでしょうか。それは、経験と知識を豊富に持つ確固たる戦略チームを編成し、各メンバーの能力を集結させて、組織の長期的な戦略を構築したことにあります。リックは言います。「アジアに対する、又このチームに対する私のビジョンは、彼らに独自の戦略を作成し、現状を革新し、そして成果を出して欲しいのです。」

ウエスタンユニオンがその成長源としてアジアに目を向け始めた正にその時期に、リックは同地域ダイレクターに就任しました。「幸運なことに私は、このエリアのビジネスを成長させるチャンスを与えられました。今までのところ、望んだ通りに進んでいると言ってもいいでしょう。」とリックは言います。「大切なことは、組織の強み、そして弱みは何かをよく理解すること。そしてその弱みを補い、埋め合わせる為のチームをあなたの周りにしっかりと固めることです。これによって、あなたはその強みに焦点を当て、チームと共に、それを更に強化をすることができるのです。」

長期的な戦略を開発する為、リックは国際的なコンサルタント会社、ストラテジック・シンキンググループとその会長であるジェームス・ヘイバーンの協力を求めました。その理由は、当時リックは確実な戦略開発プロセスを構築してくれる専門家の必要性を強く感じており、又彼はチームの人々に、今後実行しようとしている戦略を彼ら自身の責任あるものとしたかったからです。「私はチームの皆に、“自分達がこれを成し遂げたのだ”という思いを持って進んで欲しかったのです。“リックに言われたからやった”のではなく。」リックはこう続けます。「自分達のチームがこの戦略を作り上げたという達成感を彼らに持って欲しいのです。いずれにしろ、今後その戦略を成功させるか否かは、彼ら自身にかかってくるのですから。もし私が、“私はこの戦略をすべきだと思うのだが”と彼らに意見を求めたならば、彼らは恐らく私の提案を自分達のものとして取り入れてしまうでしょう。私は彼らに“枠にとらわれない”考えを持って欲しかったのです。クリエイティブで革新的な考えを。そして、その中から最も価値があり、かつ私達が達成可能な戦略を共に構築していきたかったのです。」

長年に渡って実施された彼らの戦略開発プロセスは、リックと彼のチームメンバーへの宿題から始まりました。「それは正にボトムアップ的な動きでした」 とリックは言います。「私達は皆宿題を与えられました。ジェームスはそれらを体系立て、私達にこう言い続けました。“これはあなたがた自身が言っていることですよ。本当にそう思っていますか?これが本当にあなたがたの求めていることですか?あなた方自身の戦略のスタート地点は本当にこのようなものでいいのですか?”と。実際、全てのアイデアは私たち自身の考えによるものでした。しかしジェームスは再三に渡って私達一人ひとりが何をし、又何に挑もうとしているのかを確認し、考えさせ続けたのです。その意味で、私も他の皆と同様に、プロセスの1人の参加者にすぎませんでした。」

組織の内部からの戦略構築の重要性をリックは強調します。「多くのコンサルタントは皆にインタビューを行い、その結果として、スタッフが何をすべきかを提案してきます。しかしジェームスの行ったことは、“私はプロセスを円滑にし、思考を体系化させます。そしてそれらをどのように戦略構築に進化させるか、その手段を示しましょう。”と言ったことでした。メンバーがそのすべき役割から脱線し、それほど戦略的でない、細かく価値のない話を始めた時には、ジェームスはすぐにその軌道修正を行いました。」

組織の戦略開発過程チームに様々なスタッフを組み込むことは、チームに大きな精神的なはずみをつけさせるものです。「当初チームメンバーは、私達が彼らの意見をとりあげようとしていることに、非常に感謝しているように見えました。つまり、私達が一方的に彼らに指示をするのではなく、彼らは“この構築に自分も関わったのだ”という気持ちを持って仕事を行うことがでたのです。その後、結果として確実な組織の成長が訪れました。私達は過程において小さな修正を加えながらも、いつも戦略が脱線することのないようにフォーカスしています。そして今までのところ、順調にいっていますよ。」

リックはこの計画に、戦略開発セッションにおいてストラテジック・シンキンググループが用いたマップを引用しました。「ジェームスの作成したマップを見てみて下さい。彼はあなたの組織を、“あなたが作りあげる城”と描写しています。その城を、どんな敵も寄せ付けないものにするために、どのように守り抜き、より強固にするか?あなたのし得る最高の状態を死守する為に、あなたは敵の様々な攻撃をかわさなければなりません。政治的問題、外部からの影響、人的要因、システム、ITや新製品等々。“よく練り上げられた戦略も、きちんと実行されなければ、その結末は必ず失敗に終わります。”とジェームスは言います。例えそれが、これ以上ないほどに素晴らしい戦略であったとしても、確実に実践されず、人々によって考えられず、見直しも行われず、もまれず、そして組織の人々に喜んで受け入れられなければ、何の価値もないのと一緒だと。」

メンバーが尽力をつくしたウエスタンユニオンの戦略は、結果的に素晴らしい成果をもたらしました。この戦略の実施による“明確に数値化できる収益成果”が得られたとリックは言います。それだけにはとどまりません。ウエスタンユニオンのアジア太平洋セクションは、戦略開発プロセスにおいてその他の地域を牽引する立場となっています。「現在ファーストデータの目標は、サービス店舗や取引の発生地域における全ての国際的電子取引を我々が行うことです。そしてアジア太平洋におけるビジョンは、国際的な送金や受領の際に、顧客に最も選ばれる企業ブランドとなることです。これらのビジョンの結びつきを見て下さい。私達の戦略はこの二つのビジョンが提示されるとうの昔から私たち自身の手で既に構築されていたのです。そしてもう一ついえることは、この、アジアという世界全体から見れば小さな地域が、巨大な国際企業の組織そのものにインパクトを与え得たことの素晴らしさでしょう。」リックは言います。「小さなどんぐりだって、時には巨大な樫の木となることができるのですよ。」


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